猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

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輪(りん)の手

maonima2007-09-10

源氏物語』を訳していると、とりわけ音楽用語に分からないところがたくさん出てくる。
「若菜下」で和琴を担当する紫の上の「輪(りん)の手」などもその一つ。小学館の全集の校注にも「古来、諸説あるが不明」とあるし、『源氏物語評釈』のいう意味もよくわからない。
『湖月抄』には「後世にあそぶ琴の譜に輪の手あり、是は右の無名指、中指、食指の三つを次第にはねて一二声あるを云ふ、此輪は右手のわざ、遊は左手のわざ也。是を以て思ひ合すべし」とある。無名指は薬指、食指は人差し指のことだから、右の薬指、中指、人差し指で順に掻き鳴らして音を出す意なのか。
 しかし、瀬戸内さんはたしか「静掻きと早掻きをこきまぜて」的に訳していたと思う(今、その本が手元にないのでうろ覚え)。これは山田孝雄の『源氏物語の音楽』に、
「箏の手法に静掻と早掻との二種の基本たる手法あるが、その両者を一曲の中に混用するを輪説といひて筝曲にて重きものsとせる、それをいへるなり」とあるのを参考にしているのだろう。
 こういうの、外人はどう訳しているのだろうと、サイデンステッカーの“THE TALE OF GENJI”の当該カ所を探してみると、
“cadenzas”
とある。カデンツァ。辞書で調べると「独奏・楽器による華やかで技巧的な無伴奏の部分」。サイデンステッカーの本にはここに註があって、それを見ると“meaning unclear”だって。
やっぱし良く分からないんだね。