猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

広告業界思い出話

 橋本治が「小林秀雄は教科書に載ってる文と『本居宣長』しか読んだことがない」といったことを書いてるのを読んで、「小林“井”秀雄」を思い出した。
 小林井秀雄は、二十年ほど前、コピーライターが一般に知られて花形になった頃、業界の間で少し有名になった人だ。サントリーの広告を手がけていた長沢岳夫さんの事務所に出入りしていたと思う。その頃、つきあっていたコピーライターが「面白い奴がいる」と教えてくれた。当時まだ彼は学生で、長沢岳夫さんやその他の人がえらく才能を買ってた。私は彼に会う事はなかったが、
「ふざけた名前だな。本気で仕事する気あんのか」
と思った。学生だったんだから、本気で仕事をする気はなかったかもしれない。
 今ごろどうしているんだろう。
 本名で今も広告業界にいるのだろうか。ひょっとしたら、すごく有名なコピーライターになっていて、
「昔、俺もバカだった頃があったよなぁ。小林井秀雄なんて言ってた時期は」
などと思い出したりしているのかもしれない。
 と書いてて思いだしたが、そうだ。たしかその彼、本名が「小林秀雄」で、評論家の小林秀雄と同姓同名だったから、「井」をつけて活動していたんだった。
 ♪さおやーさおだけー、こばやしーいひでおー……。

 さよ〜なら〜。


 広告の黄金時代、宣伝会議という会社(今の宣伝会議新社とは別。東銀座にあった老舗で、潰れて新社になった)に三年近くいたので、その他、広告業界の思い出は尽きることがない。けれどもここではとても書けないようなことばかりなので、『源氏』が終わったら、当事者に迷惑がかからぬような(や、それは無理かな)別の形で文章にしてみたいものである。広告業界以外のも、いろいろ。
 それには『源氏』だ、今はともかく。