ところで額田先生の家に行ったのは五人と書いたが、確認してみたら四人だった。RちゃんとT田さんとT塚さんと私の四人である。額田先生の家で、先生が撮って、焼き増しして私たちに配ってくださった写真をみて気がついた。
なぜ五人などと勘違いしていたのだろう。
額田先生のことも混ぜて計算してしまったのだろうか。
しかし、このような微妙な勘違い、思いこみというのは古い記憶にはありがちなものだ。
思い出したくないことは、あえて記憶から消されていることだってある。そういうのは精神科医などに聞けば、ちゃんと説明してくれるし、その手の本にも書いてある。
だから、これから私が書くことも、記憶違いや思い違いがあるかもしれない。
いや何も、それほど大げさなことがあったわけではないのだ。
木製の戸が開くと、額田先生が着物姿で立っていた。
玄関は薄暗かったが、目が馴れてくると、額田先生の背後にぼんやりと等身大の仏像の姿が見えた。さらに目を凝らすと、それは、新聞紙を広げたよりももっと大きい、広隆寺の弥勒菩薩のポスターであることが分かった。
写真解説
「ほもほも。今日もこんな事件があったほも」
「人間界は大変だほもね」
「俺が守ってやるからだいじょぶほも」
「ちょっと重いほもよ」