枡野浩一さんから『淋しいのはお前だけじゃな』(集英社文庫)を。
「毎日のように手紙は来るけれど あなた以外の人からである」
のところに、子供の頃から手紙の代筆を頼まれたりしていたってことが書いてあって、平安時代の歌人みたいだと思った。平安時代も、歌や字の上手な人が、主人や友人の手紙の代筆をしていたんだもの。
「五年後に 仕返しされて殺される 覚悟があればいじめてもよい」
ってのも凄い。
もとよりいなかった不二子なのに、帰ってしまうと、確実に記憶は残って、事に触れ不二子を思い出す。
不二子が帰る時、タマはさよならしたけれど、きょうだいのポロは二階で寝ていてさよならできなかった。それで、不二子の帰宅を知らなかったポロは、二階から降りてくると、いつもとは別猫のように、部屋中を走り回ってカーテンの陰や、シバがいる外が見える窓を覗き込んでいた。明らかに不二子を探している姿が、いじらしくも胸に迫るものがあった。古語なら“あはれ”と言うべきか。
(娘の寝床を占領する猫ども。左・不二子さま、中央・タマ、右・ポロ。奥の火鉢っぽいのは不二子持参のトイレ)