香山リカさんから『鬱の力』(幻冬舎新書)。五木寛之さんとの対談本だが、字も大きく読みやすいので一気に読了。
鬱と鬱的なものを分けて考えた上で、鬱的なものは肯定すべきというのは、なるほど、だ。
私は世間の人が気軽に、
「鬱になっちゃってー」
「最近、鬱気味でー」
と言うのに抵抗を感じていた。「鬱ってそんな生易しいもんじゃないだろ」と。
「最近、ノイローゼ気味で」
という言葉にも、ノイローゼになったことのある私としては違和感を覚えていた。
だから、そういう意味で「鬱」と「鬱的なもの」を分けるのはいいと思った。
しかし、本格的な鬱病は、薬が絶対不可欠であろうと思う。
それにしても、
「病気の原因がはっきりしないときに、実は歯の問題だったということが非常に多いんです」
という五木氏の発言にはドキリとさせられた。
五木さんは、何でもかんでも脳が原因という風潮には疑問をもっていて、腸が意思をもって、何かの原因となっていたりすることもあるのではと言っていて、それもなるほどだ。
また、五木さんの奥さんが精神科医だったとは初めて知った。
香山さんが、
「私は即身仏にすごい興味があって、何回か見に行ったことがあるんです」
というのは、香山さんの知られざる一面を見た思いで、ピクッとした。
私も即身仏に興味があり、羽黒山の鉄門海上人を見に行ったり、内藤正敏の『ミイラ信仰の研究』を読みふけったりしたことがあるだけに、なにか香山さんが一気に身近に感じられた発言ではあった。
小谷野敦さんの『童貞放浪記』もぱらぱら読んだ。
私は「黒髪の匂う女」をいちばん興味深く読んだ。
これは、しかし、関係者には、誰が誰とすぐに分かってしまうのではないか。
『源氏物語』も、源典侍は誰、大夫監は誰と、当時の宮廷人ならすぐに分かったのだろうか。
同級生に、ラーメン屋の娘で、T大の院に進んだ人がいたが、彼女はどんな思いで院生活を過ごしていたのだろうと、少し気になった。