24のころ、
ひどい男につまずいたことがあった。
その男とは仕事で知りあった。
まぁ私がつきあった男は最初の男以外はすべて仕事で知りあったのだが。
身長は185センチくらいの大きな男で私とは四十センチ近くの差があって、広告企画の事務所を経営していた。といっても社員は彼と秘書のふたりである。
この男がまぁ、ロマンティックな文章を書く奴だった。
誘われて、何度か断っていたものの、ある日、友達も一緒というのでまぁいいかとオッケーしたら、いきなり高級クラブに連れて行かれた。
酒ののめない私が、
「甘いものが好きだ」と言うと、
「ちょうど今日、うちに日本一うまいケーキ屋のケーキがある」
と言う。
「来て来て」
としつこいので、深く考えもせず、一緒にタクシーに乗った。男の友達は別のタクシーに乗った。
男は異様にハイテンションで、
「運転手さん、運転手さん。ぼく、今日、すっごく幸せなの」
と、はしゃいでいたのが、気になった。
私は本気でケーキだけ食べたら帰ろうと思っていたのだが、そのとき、すでに夜の十一時五十分くらいだった。一人暮らしを始めたばかりの私は外泊はしたことはなかったが、
「まぁ、タクシーで帰ってもそんな距離じゃないし、いざとなれば、泊めてもらえばいいや」
と、軽く考えていた。
ああ、
と、ここまで書いただけで、私は当時の自分の愚かさに、気が遠くなる。
いまどき、小学生だって、お菓子に釣られてあやしいオジサンには付いていかないだろうに。
いや、その男はオジサンではなく、当時27の若い男で、爬虫類的なイケメンではあったのだが……。
(続きは、恥ずかしいので、この日記の目立たぬところに隠しました。読みたい人だけ探して読んでね)
玄関先で惰眠を貪るシバ。