猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

山本さん

山本淳子さんと対談した。
とても小柄な方で驚いた。

山本さんは、教科書の紫式部の項目を書くために、研究者になったという。

そんなふうに真摯に教育について考えてらして、教科書を書く、書き替えるとはっきりとおっしゃっている方にお会いしたのは、
記憶に残っている限り、今まで生きてきて二人目だ(もっといた気もするが、忘れた)。
ひとりは佐藤雅彦さん。
佐藤さんは二十年前、まだ電通にいる頃から、
「教科書を作りたい」
と言っていた。そして、
「一生に、この本だけでも出せたら良い。そんな本を書ければ」
とも言っていたが、奇しくもこの山本さんがまた、
「『源氏物語の時代』は、一生にこの本だけは出したかった」
とおっしゃっていた。
そして、『源氏物語の時代』は、定子やら彰子やらの気持ちになって、乗り移ったようになって書いたという。

佐藤さんのことを私は、
「啓蒙型天才」
と思っているのだが、山本さんもその傾向のある人なのかもしれない。
真摯な、こころざしの高い研究者だった。


紫式部の道徳性にこだわるあまり、末摘花との性愛やらその他、作家の実験ともいえるラディカルな部分についてもっと話せなかった心残りはあるし、なんかこのところかなりの鬱気分になっていたところにきついものがあったが、山本さんにお目にかかれただけでも良しとしよう。
だって対談なんてガンダムの富野監督以来、二年ぶりだもの。
慣れよ、慣れ!
(と、我とわが身を慰める)

それに山本さんも、昔は漫画ばかりよんでて、描いてもいたのが、古典に行ったという、私とそっくりの道のりを辿っているのには驚いた。やっぱり現代人で漫画読まないとかいう人は信用できないからな〜。

私が漫画から古典へいったのは、対談でも言ったが、漫画を描く才能がないと気づいたから。
漫画は、今でも古典にまさるとも劣らないほど好きだ。
漫画も、なかなか一筋縄で分かるものじゃないし、サブカルチャーとされながら、凄い高レベルで、物語性があるという点で、『源氏物語』をはじめとする古典と似ていると思う。
山本さんも、だからこそ、漫画が好きだったに違いないと思うのだ。
もし次にお会いしたら、山本さんに「聖おにいさん」とか、一条ゆかりの「プライド」をプレゼントしたいものだ。