猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

山本淳子編『紫式部日記
角川ソフィア文庫(ビギナーズ・クラシックス)
まだぱらぱらと見ただけだが、これはいい。たとえば有名な、清少納言のことをこきおろす箇所の訳は、
「〜彼女のように、人との違い、つまり個性ばかりに奔(はし)りたがる人は、やがて必ず見劣りし、行く末はただ『変』というだけになってしまうものです〜」
(原文“かく、人に異ならむと思い始める人は、必ず見劣りし、行末うたてのみ侍るは”)


“うたて”ってとこを「イヤな感じ」とかじゃなく、「変」と訳したところが、はっとさせられる。
訳文と原文と解説、そして図がふんだんに載ってて、この解説がまた、彰子の皇子出産の際、産養の宴のあと、殿方が“攤”(賭け事の一種)を打つところを、現代のパーティのビンゴゲームにたとえたり、山本さんは、読者が楽しく学べる内容を、やさしい言葉で書く達人だな。





吉川徹『学歴分断社会』
佐藤俊樹『不平等社会日本』
竹内洋『学問の下流化』の三冊を図書館で借りてぱぱーと。
『学問の下流化』はあまりの退屈さに耐えきれず断念。
『不平等社会日本』も新書としてはあんまし……。
文章も分かりやすく、中身も面白く感じたのは吉川徹の『学歴分断社会』だったが、この手の本はどうも今ひとつ何かが足りない………。
ひょっとしてこれらの本の「足りない」感を埋めてくれる一つの答が小谷野敦の『東大駒場学派物語』の類いなのだろうか、と思ったりする。
それはそうと、この本の148から158ページあたりは、小説を読んでるような感じの引きずり込まれ方をされる。




WEB日本語29回目更新。
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