ゴミ回収車の人がシバに話しかけてる。
「おはよう、見に来てくれたの、あったかいからいいね〜ばいばい」
人はなぜ犬に話しかけるのか。
犬は何も答えないのに。
同じほ乳類だし、人に飼われてる犬だから何か通じる、話しているうち伝わるって感じるのだろうか。
たしかに伝わるのだ。
犬は人のことばがけっこう分かると今の人は知っている。
しかし、犬の何たるかを知らない太古の昔の人はそうではあるまい。
何万年も昔、まだ犬が家畜化されず、狼か、あるいは狼に近かった頃、わぉんわぉんと吠えるだけのそいつに、かまわず人語で、
「話しかけてみよう」
と考えた昔の人の、孤独で優しい心を思うと、目頭があつくなる。