猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

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『岩佐美代子の眼』

わたしは笠間書院の回し者でも頼まれたわけでもなんでもないのだが、この本はとてもためになる。


『岩佐美代子の眼』によると、岩佐の父方祖母は渋沢栄一の娘、母は児玉源太郎の娘。岩佐は現天皇の姉の同級生で遊び相手。知らないうちに見合いさせられ19で結婚したという。
父の穂積重遠(明治16〜昭和26)は法学者。終戦当時の東宮大夫もつとめた。
児童虐待防止法」という名称が露骨過ぎる、「児童愛護法にしろ」という意見に、岩佐の父は断固反対したといい、岩佐は、
「名前だけを曖昧な、綺麗なようなのにするのがいいことでは、ない」と。
岩佐美代子は清泉女子大二次セクハラで雇い止めになった秦澄美枝を支援する研究者の会の代表者もつとめていた。



p184「終戦の時に、天皇制なくさなかったのは、残念な事だったと思います」
アメリカの方だってね、日本の中を上手くおさめるためには、天皇を担ぐよりしょうがなかった」
「そうじゃなかったら、日本がどうなったか、わからない」
「だけど、それくらい荒療治しなけりゃ駄目だったの」
「少なくとも、昭和天皇は退位すべきでした。やめて、坊さんにでもなるべきでした。何ていったって、昔の天皇は、責任は負いましたものね。退位したり、流されたり」
p185「結局、戦争にみんな行ったんだってね、『天皇陛下のため』と言われたら、誰も嫌だと言えないわけね。それを強いて嫌だと言えば、罪九族に及ぶ」
天皇、そしてご一家は、お幸せかといったら、そうじゃないんですから。ただ国のためにおいてあるだけなんですから。基本的人権はおありにならないし、止めたくてもその自由もおありにならない」
p186「私はもう、今後は天皇制をなくさなければ、日本人は成長しないと思っています」
天皇制の平安時代が生んだ優れた文学は素晴らしいとは思うけれど、
「でもそれは、天皇・皇室に準ずるような、公家社会・華族社会というものがちゃんと機能していた時代のことでしてね、そういう中間地帯がなくなって、身分的に天皇だけが突出してしまわれた現代を考えますと、もう無理に存続することはないと思いますね。もし存続したいなら、国民がもっと大人になって、むやみにアイドル視するかバッシングするか、その二つしかないような今の風潮を改めなければ、本当にお気の毒だと思いますよ。抗議する事も反論する事もおできにならない方々なのに、人権問題じゃありませんか」
これ、皇室の身近にいて、父親も法律家で東宮大夫つとめて、いかに天皇に人間的な自由がないか、知っている人だから言えることだろう。私もほんとにそう思う。



聞き手の岩田ななつによる「聞き終えてーー解説・あとがきにかえて」によると、岩佐の父穗積重遠の婦人問題に対する考えの基本は、
「婦人問題は婦人問題にあらずして人類問題であり」
「婦人を男子と『同等』ならしめよといふのは『同一』ならしめよといふのではない。男子は飽くまで男子であり女子は飽くまで女子であるが国民としての価値が男子も女子も同等でなくてはならぬ」(昭和18年)



古典はとにかく何でも濫読! っていう古典に関することは私がやってることと同じで、発見はなかったが、現代史の裏側みたいのも垣間見れて、楽しい。
あと、岩佐は国立国会図書館で働いていたと書いてあるが、昔、国会図書館でバイトしてたっていう女の子が、やっぱり皇室に近しいお嬢様だった。
下世話な話だと、馬券売り場は実入りがいいので、コネもってるおばさんしか働けないって聞いたことあるけど、
国会図書館もなんかとくべつな階級だけにとくべつなルートがあるのだろうか。
山科鳥類研究所とか。



あと岩佐美代子『宮廷文学のひそかな楽しみ』の『枕草子』のはいぶしに関する考察も面白かったっけ。
宮廷生活のよく分かんない部分の理解の助けにはとってもなる。そのへんのことは案外変わらないもんだと思うし、だから民俗学なんて学問もあるんだろうし。
研究書はあまり読まない私なのだが、なぜか岩佐美代子の本はほかに『永福門院』『宮廷に生きる』も読んでいる。
読みやすくて、しかも発見と共感があるから。

岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい

岩佐美代子の眼―古典はこんなにおもしろい