「記憶は土地につくんじゃないか」、
と思って、そう書いたことがあるそうだ。
そして、認知症の治療にも回顧療法というのが使われたりするらしい。
母は親の仕事の関係で、子供時代は国内外を問わず物凄く移動が多かった人だから、そこで覚えたことをそこに行かなきゃ思い出せないとしたら、ずいぶんあちこち行かねばならないというか、それだけ人より脳にかかる負担が重かったのかもしれない。
それで脳血管がもろくなってしまったのかなとさえ一瞬思うが、やはり小さい頃から引越が多くて、長じても夫の仕事の関係で移動の多かった母方祖母は、べつに脳の病気にもならなかったから、母の脳血管の弱さは生まれつきなんだろう。
まぁ子供の頃、引っ越して前の出来事を忘れるのは生きていく上で大事なことだろうから、そんな負担はなかったのかな。
ただ、それだと年取っていろいろ思い出すことが限定されてくるだろうな。
母は五歳前後から七歳あたり、たった二年ほど過ごした一つの場所が頭にこびりついているようで、そこはどんなに遠くても、いつも思い出と共に頭にあるようなのだが……。
(写真は雪降ってた日のシバ。寝込みを撮られたので寝ぼけ顔)