猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

狙われるシバ

おととい、シバの散歩をさせたうちの子が、外で誰かおばさんと喋って笑っているので、友達のお母さんかお向かいさんかなと思っていたら、
「あー怖かった」
と帰って来た。
「何、どうしたの?」
「いまソロモンちゃんていう雄の柴犬連れた人と神田川からずっと一緒だったんだけど、そのソロモン、三年前からずっとシバのこと好きだったんだって」
「へー」
「ソロモンちゃんの飼い主はもともと近所にいたんだけど、一時は京都にいて、そこで雌の犬と政略結婚したんだって。子供も生まれたんだけど、事情があって二年前、ここに戻って来て、シバを見そめたらしい。シバの名前は近所の●●さんておばさんに『あそこの可愛い犬なんて言うの?』ってわざわざ聞いたんだって。京都の妻より好きになってる感じだって」
「ふーん」
「ソロモンちゃんは五歳で、シバと年の釣り合いもいいし、その飼い主さん、なんか、シバと結婚させたがってるみたいなんだよね。シバちゃんは結婚とかしないの? って聞くの」
「ええっ」
「奥さんいたらダメかしらとか」
「なんか生々しいね」
「シバちゃんほんとに可愛いね。どこのブリーダー? とかも聞かれて。そんなの知らない、ただペットのコジマで買ったんですって言ったんだけど」
「シバに子供が生まれたら、人にあげるにしても、一、二ヶ月はシバのおっぱいやることになるだろうけど、ここではとても育てられないよ」
「うん。だから、シバは結婚の予定はないですって答えたんだけど、それじゃあかえってソロモンちゃんにも可能性があるって勘違いされちゃうかな」
「いや、それはないと思うけど」
「ソロモンちゃん、シバと同じリュックみたいなハーネスしてるんだけど、それがぐいーんてちぎれそうなくらい、もうシバにくっついて離れないんだよ。それが怖くって」






 ソロモンちゃん。
 そういえば私もずいぶん前に会ったことがあった。
 シバの女王とソロモンじゃ、運命の出会いですね、なんて話した覚えがあるけれど。近頃会ってなかったな。
 と思っていたその夜、散歩に出かけようとしたら、なんと、外にソロモンちゃんとその飼い主さんが!!
「こんばんわ〜。うちのソロモンがシバちゃんのこと好きで好きで。昼間もお子さんにお会いして言ったんですけど」
 見ると、ソロモンちゃんは子供の言った通り、ハーネスを引きちぎらんばかりに、シバに抱きかかっていて、今しも交尾が始まるのではという勢いなのだ。
 シバもまんざらではないらしく、さほど嫌がってはいない。
 しかし、寒いし、
「じゃあね〜ばいばい」
と坂を下ったものの、ソロモンちゃんはいつまでもこちらのほうにぐいぐいしていて、
「くうぅぅん」
と、子犬のように甘えた声が追っかけてくる。
 シバはといえば、やはりソロモンちゃんが気になるのか、しばしは顧みがちであったが、坂にさしかかると、前を向いててってってってっといつもの走り歩きに。
 子供がおびえたのも分からなくはない、ソロモンちゃんの激しい情熱ではあった。




 とか思い出していたら、外で人声がするので、窓から覗くと、またしてもソロモンちゃんが!
 飼い主さんはソロモンちゃんを引っ張ってるのに、ソロモンちゃんはシバのいる前をなかなか動こうとしない。
 見ると、ソロモンちゃん、シバと体格もあんまり変わらなくて、顔もシバそっくりの可愛い童顔。
 雌って言われれば信じてしまうような。
 しかし、近所の雄柴ゲンちゃんはシバにまるで興味を示さないのに、ソロモンちゃんの浅ましいまでの好き好きぶりは……。
 犬にもはっきり好みがあるんだなぁ。



ソロモンで検索したら、二年前の日記が出てきた。ちなみにこの写真の柴犬は、手前はシバだけど、奥はソロモンちゃんとは別犬。http://d.hatena.ne.jp/maonima/20090118