猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

光源氏になってはいけない

山本淳子さんの『わたしが源氏物語を書いたわけ』というタイトルも衝撃的でしたが、助川幸逸郎さんの、
光源氏になってはいけない』
も強烈なタイトルです。
さすがは『源氏物語』、もう出尽くしたかと思いきや、最近また次々とこうして今までになく面白い『源氏』本が出ているんですね。
11/22創刊の「週刊朝日百科 絵巻でよむ源氏物語」の鼎談(「平成の女房が噂する源氏の恋」)が11日にあったので、その行き帰りにでも読もうと持っていったところ、これがタイトル以上に楽しめた。



「日本の最高権力者は、<空気>でしょう。」という冒頭から、『源氏物語』時代の貴族たちがいかに空気を読むことに汲々としていたか、そういう社会で並外れた才能をもっていた紫式部が、どれほど生きることに困難を感じていたか、ときて、すでに共感の嵐なのですが、
源氏物語』は「セミノンフィクション」という、画期的なジャンルを開拓した作品」であって、平安時代のセレブ男たちにも受け入れられたのは、司馬遼太郎塩野七生みたいな「実録小説として読める部分があったため」などなどの濃い話が、語りかけるような筆致で全編綴られているものだから、読むのが止まらなくなってしまいます。
私はずっと前、『平家物語』の本を出す1999年あたりから、
「優れた古典は実用書」と言っているのですが(「新潮45」1999年7月号「古典のご利益」特集とかで)、
実用書としての『源氏物語』の実力が、分かる一冊となっていると思う。



こんなに気持ちが明るくなる『源氏』本て初めてかも。
確かに今、『源氏物語』を書くなら、反面教師としての『源氏物語』しか書けないかもだし。
助川さんとはお話こそしてないものの、一度お目にかかったことがあるんですが、異様なオーラのある方で、いかにもただ者じゃない感じの方だったものですから、やっぱり! と深くうなづいている次第です。

光源氏になってはいけない

光源氏になってはいけない