猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

三浦先生とこうのさん

今回書き下ろした『古事記 いのちと勇気の湧く神話』では、帯に、推薦者として三浦佑之先生とこうの史代さんのお名前とイラストをお借りしてます。
「●●氏推薦!!」
というのは、虎の威を借る狐のように権威ある人の名前で箔付けするみたいなやり方のようにも見えて、場合によっては見苦しいと思うところもなくはなかったのですが、今回、出版社から、こうのさんのイラストを帯にお借りすれば、インパクトがあるのでは? という提案を受け、それは確かに! しかしどうせ推薦者の名前を頂くなら、三浦佑之先生にも! とお願いして、このビッグ2の推薦を得ることができたのです。



お二人とも、対談をしたご縁で、こうして名前を頂戴することになりました。
三浦先生の一連のご著書には本当にお世話になっているのです。
『口語訳古事記』は、独特の語りが特徴で、『古事記』がまだ語りの世界で生きていた原初の姿がたちのぼってくるような、それでいて、学問的裏づけや説明が頭に入ってくるという希有な本です。
作家の訳本なんかだと、『源氏物語』でもそうですが、逐語訳ではない自分の意見が時として入っていて、どこからどこまでが原文の訳なのか分からないというところがあるのですが、三浦先生の訳は、「この一文、補入」という断り書きがあるので、ここは原文にないところという区切りがちゃんと分かる。
古事記』では神代編に当たる上巻に属するカムヤマトイハレビコ(神武)の伝承を神々の世界として位置づけた理由も断り書きも。
そして『古事記』の原文は全部漢字なんですが、
読み下し文は本によってまったく違っていて、『古事記』は訓読できないなんて説もあるほどで、それなら漢字の原文を見ながら、訳したものを読むほうが合理的ではないかと、ずいぶん訳本を読みましたが、『古事記』を大系本で初めて読んだ時の、何とも言えない驚きと癒される感じがいちばん再現されたのが、古老の語り方式で訳された三浦先生の『口語訳古事記』でした。
天皇崇拝的な妙なイデオロギーっぽいものがないのも良かったです。
だって、『古事記』って『日本書紀』と比べれば一目瞭然だけど、全然天皇崇拝的な感じ受けないですよ。むしろ天皇を呪っているんじゃないかというところも多々あるほど。



三浦先生のご本はほかにも『古事記講義』『古事記のひみつ 歴史書の成立』『古事記を旅する』などたくさん読みましたが、どれも神話の底力が伝わってくるご本でした。 




そしてこうのさんの『ぼおるぺん古事記』。
こうのさんのやわらかな絵が、一見、『古事記』のワイルドな世界に相反するような印象を最初、私は受けたんですが、実は全然違ってて、
動物や神のお伽話的な設定ながら、その実、近親相姦とか惨殺とか兄弟親子の確執といった凄まじい人の世の真実を描いている、そうと気づいた時には、あまりにすんなり受け入れてくれる入り口なものですから、もうその世界にはまっていて、それでいて、登場人物を裁くことなく、淡々と問題が語られていく、そんな『古事記』のあり方と、すこぶるこうのさんの絵柄が重なっていることが、
読んでいくうち、体感できてくる。
結果、元気が湧いてくるという……。
その辺の感想は、こうのさんとの対談でも申し上げたので、良かったらこちらを

http://www.honyaclub.com/shop/contents2/tenbo10_tokushu.aspx
(二)以降も楽しみです。



そんなお二人の名とイラストを帯に頂き、凄く華やいだ感じになって、大満足の一冊なので、ぜひ! という、今回も結局は、拙著の宣伝なんですね(笑)。

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻

ぼおるぺん古事記 (一)天の巻

口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)

口語訳 古事記―神代篇 (文春文庫)

口語訳 古事記―人代篇 (文春文庫)

口語訳 古事記―人代篇 (文春文庫)