明日は、読売新聞の夕刊で「後ろ向き古典倶楽部」連載の第三回目。
今度は『方丈記』です。
それはそうと、性格や生活態度がわざわいして、生前は正当な評価を得られない芸術家っていますよね。
和泉式部もその一人。
今なら、和泉式部と赤染衛門を比べて、どっちが優れた歌人かなんて議論の余地も無く、和泉式部なのに、和泉式部が生きていた時代は赤染衛門だったんですよね。
『方丈記』で名高い鴨長明の歌論集『無名抄』は、
「当時の“しかるべき会、晴の歌合”などを見ると、赤染衛門をもてはやして、和泉式部は洩れていることが多い」
「今の世では皆、和泉式部のほうを優れていると思っている。が、人の業績というのは、本人の生きているあいだは、その人柄によって優劣が決められることがある。歌に関しては式部は並ぶ者のない達人だけれど、身の振る舞いや態度、心構えなどが、赤染には及ばなかったせいだろう」
と、有名な紫式部日記の、和泉式部をこちらが気後れするほどの歌詠みではないとして、赤染衛門をこちらが恥ずかしくなるほどの読み手と評価しているくだりをあげてます。
和泉式部は人柄のせいで生前は否定されていたものの、本当は歌の名手なので、その後は勅撰集などにも多く入り、評価をされている、と。
人柄のせいでその業績が評価されない……。
色々身につまされることばです。