猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

「この世界の片隅に」感想

昨日、評判の映画を見ました。
「普通の女の子の目線から見た戦争」が凄く良く描かれていると絶賛している人もいました。

確かに絵は素敵で面白くはあったし、好きなシーンもいっぱいあったしけど私は好みではありませんでした。
主人公の女の子も「普通」とは思わなかったし。
(民俗学的資料としては凄く貴重で面白いと思うけど、それなら原作のほうが素晴らしいのでは? という予感がするし、現に原作、素晴らしかったという周囲の声も)


映画は庶民はみんな善良、みたいな感じが伝わってきて、イヤだった
たとえば、うちの母方祖母(戦争当時は神戸と横浜にいたはず)や父(大阪人)から聞いた話だと、上等の着物たくさん持っていっても、農家は足元を見てお芋一個しかくれなかった、それもここぞとばかり投げるようにして意地悪なやり方だったとか、あるいは父なら(当時は十代の子供)、クソ真面目にポンプで水をくむ作業を言われた通りにしていたら逃げ遅れたものだから、手近の防空壕に「入れてほしい」と頼んだところ「お前はよその子だからあかん」と断られたとか(結局、その防空壕に爆弾がおち、断った人たちは皆死んだって)、そういうエピソードがいっぱい出てくる。
非常時ならではのせっぱつまった心のエピソードが。

でもこの映画の描き方だと、当時の日本人の庶民はみんな驚くほど善良……としか思えない。
よその防空壕でも「災難だったね」といたわられたり。
そのへんがリアルじゃない。
「作風」なのかもしれないけれど、それこそ「普通の人」が悪者になる戦争の怖さが全然伝わってこなかった。
被害者意識しかないようなところもイヤ。
(たぶんこうの史代さんの原作はそこいらへん違うような気がするので、追って原作を読んでみたいと思います)




戦争の怖さ以上に、全体的に「昔は良かった」幻想をもたらしそうな描写がそこここにあって、私は違和感を覚えてしまった。
あと、この映画のこと、みんな絶賛していて、少しでもマイナスな感想を言えない雰囲気があるのが怖いです。