猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

光源氏の恋文

 光源氏はラブレターを書くのも、どんなに想いを連ねたい時でも、万一、紛失して拡散することでもあったら……と用心して、おぼめかして(ほのめかして)、ことばを省いたものだ。

 と、妻女三の宮への柏木の熱い恋文を発見した時、思っているが、この光源氏の用心を、ふと思い出すことがある。
 藤壺とは、暗号みたいな恋文のやりとりなんかもしていたのだろうか……。

 なんて、『源氏物語』には書いてはいないのだが、そんなふうに妄想したりもする。

 

 

 実際、我が身を省みると、昔、もらったラブレターには、かなり恥ずかしい思いが書き連ねてあって、

「もしもこんなのが親に見られたら」と、あとでぞっとしたこともある。

 逆に、あまりに普通の文面で、それがラブレターとは気づかず、あとで男に聞いたら、そうだった……と知った時には、自分の鈍さが呪わしかった。

 いや、正直、うっすら気づいてはいたのだが、「えっ、それ、ふつうの手紙だよ」と言われたりするのが怖い、傷つくのが怖くて、そう思わないようにしていたふしもあったのだが。

 

 メールが普及すると、そういう心配もなくなったが、逆に暗証番号などを盗まれると、「流出」という恐ろしいことにもなる。

 いずれにしても、今の私にはとんと縁のない話ではあるが、光源氏の用心は、今なお教訓になることなのではないか……と、そんなふうに思う秋の夕暮れ。

 

 

 

続きである。

否、藤壺光源氏には暗号は必要なかったかもしれない。

二人にとってはごくふつうの日常のことばが、愛の暗号になったに違いない。

と、また思い返す秋の夜。 

ちょっとロマンチックに走り過ぎました……。