『エロスでよみとく万葉集 えろまん』
凄いタイトルだと言う人多いです。
私も最初、そう思いました。
というのも当初、この本は『エロ目線でよむ万葉集』というタイトルを私がつけていて、原稿送信の時は長いので「エロ万」と略していたのです。それを編集の方が気に入ってくださって、『えろまん』というタイトルになりました。
買う時恥ずかしいのでは? R18に指定されてしまうのでは? と私は心配で、申しあげたところ、『エロスでよみとく万葉集 えろまん』というのが全体のタイトルなので、前半のほうが先にくるので大丈夫とのこと。
遠く離れて住む娘にもメッセンジャーで相談したら、「大丈夫だよ。せっかく版元が攻めてるんだから、それに乗ったほうがいいよ」と励まされ、このタイトルになったのです。
タイトルに関して色々反響はありましたが、いちばん驚いたのは、中世史の恩師の瀬野精一郎先生(88歳)で、手紙を入れて自分で郵送したのですが、いつもならお礼状だけなのが、わざわざお電話を下さって(本を送って瀬野先生からお電話もらったの初めてで驚きました)、
「今度の本のタイトルは凄いですなぁ」
と。
「まんは『万葉集』のまんでして」などと説明すると、
「そうなんですかぁ?」と笑ってらっしゃいました。
先生的にもよほどインパクトを受けたのでしょう。戦前生まれの先生は『万葉集』というと「愛国百人一首」を思い出すそうで、小倉百人一首は半分近くが恋歌なのでけしからんということで、新しいカルタをつくれ、というんで、『万葉集』から多くの歌が選ばれたと説明してくださいました。
昭和十七年に作られて、しかし、ほとんど愛唱されぬまま、消えていったとか。
この百人一首の選考委員には北原白秋や折口信夫がいたとのこと。
白秋は人妻との姦通で監獄入りしてたこともあるし、折口はゲイでしたよね、なんて話も先生としました。先生曰く、
「昔はとんでもないことが沢山あった。僧侶である教師が中国でこんなにひどいことをいっぱいやったと授業で話したり、終戦後、海に残っていた浮遊機雷に、連絡船が触れて爆発して何人も死んだり。本当に戦争は嫌です。今が一番いい時代です」と。
瀬野先生はメチャクチャ面白い人で、その日も、
「先生もどうぞお元気で」
と電話を切ろうとしたら、
「いやいや時間の問題ですよ。とっとと死んだ方がお国のためですからね。団塊の世代が老人になって、莫大な医療費がかかってきますからねぇ」
とかおっしゃる。
先生の自虐癖と皮肉とユーモアは有名で、本など出されても、「私の最後の迷惑行為と思って、御宥恕されたい」的なことが書かれていて、笑ってしまいます。
『えろまん』のおかげで、何十年ぶりかに先生の声が聴けて、驚くと同時に、なつかしくて、電話を切ったあとはちょっと目頭が熱くなりました。
↓先生もびっくりのタイトル
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