スザンヌ・オサリバン 高橋洋訳『ボイコットする身体 脳神経科医が出会った心身症患者たちの物語』紀伊国屋書店
まだ飛ばし読み状態であるが、心が身体に影響を及ぼした患者の様子が、医師目線で報告されている。
そして「診断されることの効果」についても。
これ、ほんとに大事で、私は30年近く前、歯の噛み合わせがおかしくなって、歯医者巡りをしたことがある。結果、原因は歯ではなく、心(脳)にあったということが分かるわけだが、そのことはS病院の精神科での三分診療ならぬ三十秒診療では納得できなかった。
医科歯科で、病の仕組みを長時間、繰り返し説明を受けて、はじめて納得できた。
納得できると症状は消え(といっても投薬は数年続けられ、その後もストレスがあるたびに何度か症状は出た。が、原因が分かっているから、何もわからないのと違って、乗り越えやすかった)、病状は快方に向かった。
心の状態が身体症状として現れる病については、それが心からくるということに、患者が気づき、納得することが、非常に大事であるとは、実感的な感想だ。
「身体化しやすい性格」というのがあるというのも、面白かった。
毬矢まりえ・森山恵『レディ・ムラサキのラブレター 「源氏物語」女たちの和歌と人生』講談社
私は『源氏物語』の全訳をしているが、そんな私の目から見ても、斬新な説があって、刺激的な本だ。
まず、長らく謎とされていた「夕顔」巻の物の怪の正体。これは、通常、六条御息所と関連づけて考えられがちなのだが、それにしては、源氏が相手を認識していないのが不思議であった。六条御息所の先祖である土地の霊なのか? ともおもっていたが、この本では、「なるほど!」という納得感で以て謎を解き明かしてくれる。目からウロコが落ちた。
末摘花の出自に関する推測も、刺激的で、『ブス論』で、末摘花を多く取り上げた私にとって面白かった。
詩人である著者姉妹ならではの、和歌のアプローチ、ことば選びの美しさもいい。
花房観音『姥捨ての山』幻冬舎
姥捨て! なんと恐ろしい響き……それでいながら懐かしいような……65歳の私にとっては、とても他人事とは思えない本である。
これに関しては、じっくり読んでからまた感想を書こうと思う。
花房観音さんの本は、いつだって、身につまされる。そして、何かしら、心が開けていく思いがする。今度の本も、そんな感じなのでは? と予想する。
上野誠 NHK『100分de名著 万葉集』NHK出版
上野誠さんは、一途に『万葉集』に取り組んでいらっしゃる。これは10月から始まるNHKのテキストだ。
「歌はコミュニケーション」「身を焦がす恋」「旅と別れのなかで」「遊び心が大切」の全四回の解説に加え、放送はないものの、「もう一冊の名著」として『文選 詩編』が紹介されている。曰く、
「『万葉集』は、最も日本的な歌集であると同時に、最も中国的な歌集であるともいえるでしょう」
今こそ、読みたいではないか。