猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

犬のお名前

maonima2006-12-19

 犬を散歩させてると、犬友達とまではいかなくても、犬知人ともいうべき知り合いがしぜん出来てくる。犬知人になるきっかけはたいてい「こんにちわー。男の子ですか?」などと質問され、「いえ、メスです」などと答えているうちに、「なんて名前ですか?」と犬の名を聞きあうところから始まる。このとき、決して飼い主の名前は聞いたり聞かれないのが特徴だ。犬の名前を答えると、相手はとたんに、
「そうなの、シバちゃ〜ん」
と、私そっちのけで、シバに語りかけたりする。向こうから話しかけてくる人はほんとに犬好きな人が多いのだ。
 「シバ」と答えると、たいていは「いや、犬の種類じゃなくて、ワンちゃんの名前」と言ってくるので、「いや、名前もシバなんです。柴犬だからシバ」と答えると、「あーら、それは一度聞いたら忘れないわね」と言われて、じっさい、次からは「シバちゃーん」とちゃんと名前を呼んでくれる。
 珍しい名前、変わった名前だと忘れないのだ。
 今まで出会った犬たちの名は、チャキ、ネロ、ゲン、チョロ、トト、ロロ、リリー、モモ、ブンタ、シシ、ウリ……いろいろだが、いちばん忘れられないのは「ハゼ」だ。
 ハゼちゃんはメス。女の子でハゼである。しかもミニテリアとでもいうのだろうか、とても可愛らしくて、まだ一歳十一ヶ月。お誕生日はシバと同じ一月である。
「ハゼ? 魚みたいな名前ですね?」
 聞くと、御主人が魚釣り、とりわけハゼ釣りが趣味で、ハゼちゃんもお供に連れて行ったりしているそうだ。それでハゼとつけられたらしい。「ハゼちゃん」と話しかけると、「ん?」とこっちを向いてくれるのも可愛い。
「自分はハゼなんだ」
って思っているのだ。
 
 犬のネーミングは興味深い。人間の子よりは当然ながらずっと無責任な付け方でいながら、飼い主の趣味とか価値観を如実に表していることが多くて。
 ネロちゃんは、でっかいゴールデンレトリバーのオスだが、その母親が皇帝ネロの母と同じアグリッピナという名であったとか。その息子だからネロと付けたんだって。私はそもそも犬にアグリッピナなんて名を付ける人が面白いと思うよ。
 ゲンちゃんの飼い主さんは、「犬はほんとはそんなに好きじゃない。柴犬だけが好きなんだ」という七十過ぎのおじいちゃまで、なるほどそういう人ならゲンちゃんって付けるよなーと納得できる。
 ウリちゃんは、小さなころ、イノシシの瓜坊そっくりだったのでウリちゃんと付けたとかで、このように、別に飼い主の趣味とは関係なく、見た目でネーミングされる場合も少なくないが、そういう見た目で簡単に名前を付けるというところにもまた飼い主の価値観が宿っているわけで、犬の名前を聞くのは、なかなか楽しいことではあるのだ。