猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

4/10は山口崇さんの奥様の杵屋巳鶴貴さん主催の長唄杵巳流「貴風会」のおさらい会というのに行ってきた。
崇仲間で、自身、三味線を始めたりへさんhttp://ishidarie.blog118.fc2.com/blog-entry-327.htmlと一緒に。
私が着いた時は、もうすでに最終演目の途中だっだが、巳鶴貴、巳楓(山口崇さん)、息子さんである巳津也、娘さんの巳織の四人による歌と三味線をしっかり楽しむことができた。
終演後、山口さんと少しことばを交わすこともできた。
りへさんはもちろん、私のことも覚えていてくれて、
「『源氏物語』もさることながら、『古事記』の本(『愛とまくはひの古事記』)、面白かったよ〜」
と言ってくださったので、それだけで、もうぱーっと目の前が爽やかに開けていくような嬉しさ。



「来て良かったね」
「うんうん」
と、りへさんとうなづきあったのは言うまでもない。
その後はりへさんとお茶のんだりして、帰宅したのは十二時頃。
(りへさんへ……お話ししたようにうちの夫も父も弟もB型です。夫の一家は四人全員B型だったって。たしかに山口さんもB型の匂いしますね)


帰宅後、しかし、子供と喧嘩して、三時まで眠れず、
でも寝てからはぐーすか熟睡。
「山口さんとこは、お子さんが二人もお父さんの好きなことを職業にしている。それも山口さんがいいお父さんだからに違いない。山口さんなら意志を伝えるにしても、もっと上手に子供が反発しないように、言うだろうに。私はダメだなぁ」と反省しきり。
反省したからといって、次、ちゃんとできるかは分からないけれど。
4/11は昼前に起き、母のいる施設へ。
母は、病院にいる時よりますます足腰が弱って、すっかり歩けなくなっていた。
けれど、顔色も良く、食堂に座っている姿は認知症であることなど忘れそうなくらい元気そうだった。
部屋に戻ると長いことトイレをしてから、「疲れた」とすぐ横になってしまったが。
それで、風呂の話になって、母は椅子に座ったまま入れる機械風呂を使っているのだが、椅子が動いて母曰く「ちゃぽーん」と湯船に入るそれが最初のうちは怖かったこと、でも今は楽しくなったことを話して、
「そういえばこないだ、とうとう恐れていたことが」
と言い出した。
「起きてしまったの」
と言うから、
「なに、落ちちゃったの?」
と聞くと、
「ううん。起きてしまったの」
「何が」
「それをこれから話そうとしているの」
と言うので、私と夫と子供と三人、固唾をのんで、横たわる母の語るのを待っていると、
「椅子に座らされて、その椅子が動いて湯船に行く途中、おならが出て」
「うんうん」
「そのおならと一緒に」
「まさか」
「起きるんじゃないか起きるんじゃないかと恐れていた事が」
「起きてしまったの」
「まっ、まさか」
と、私たちが笑い出すと、母もいかにも嬉しそうに笑い出して、
「この椅子にはなんで穴が空いているんだろうと思ったら、その穴からぽとーんと下に」
「ええっ? ま、ま、まさか湯船に」
「ふふふ」
「えええ〜〜????」
「ふふふ。湯船にはね、入ってない。湯船じゃなくて、かろうじてその手前」
「はー、良かったね」
「そう。湯船の手前に二本ほど落ちてしまって」
「あははは。それでそれは」
「すみませんねえって係の人にあやまったら、いいんですよ大塚さん、馴れてますからって、溝みたいなとこにそれを柄杓の柄みたいなもので押し流して、その柄杓は消毒液で綺麗に消毒して、あたしのお尻も洗剤を泡立ててしっかり洗ってくれてね」
「へーっ、親切だねぇ」
「そうなの。ほんとにねぇ、大変ですねぇ先生も(母は風呂の介助の人を先生と呼んでるらしい)こんなことまでしなきゃいけないなんて。男の人の時とかは重くて大変でしょうって言ったら、いえいえって」
「ふーん」
「それにしてもねぇ、あの椅子の穴はなんで空いてるのかと思ってたら、そのためにできてたのねぇ。穴から坂になってて、そこをちょうどうまくすべっていって、すぽーんと落ちて」
「いや、その穴はそのための穴じゃなく、水がよく切れるようにする穴だと思うよ」
「それ以来ね、注意してるの。だから今みたいにちゃんとトイレで出ると嬉しくってね」



ということなのだが、とにかく母の「じらし話術」が巧みで、一家三人、大笑いしてしまった。
子供も「ばーばは話がほんとにうまいね。昔からうまかったけど、今もそれは変わらないねぇ。私も、何か話す時、すぐ落ちを言わないで、タメてから言うようにしたら、面白くなるんだろうなぁ」と感心していた。
それにしても、二度目の脳出血以来、この手のネタは増加の一途をたどっていることではある。