ハロウィーンが近づいてきたが、
『万葉集』にも渋谷のスクランブル交差点的な場が詠まれている。
“八十の衢”。
“言霊の 八十<やそ>の衢<ちまた>に 夕占<ゆふけ>問ふ 占<うら>正<まさ>に告る 妹は相寄らむ”
(事霊 八十衢 夕占問 占正謂 妹相依)巻第十一・2506
「言霊がパワーを発揮するスクランブル交差点で夕占いをした。結果はドストライク! あの娘<こ>は俺に気があるってよ」
と、訳しました(『エロスでよみとく万葉集 えろまん』から)。
上の歌は、言霊が威力を発揮する場所(“八十衢”)と時間(“夕”)に占いで問うたら、「目当ての女はなびきます!」と告げられたので「この占いは正しい!」と快哉を叫んでいる。場と時を選び、万全の構えで臨んだ占いは吉と出たわけだ。
“八十の衢”とは四通八達の交差点の意。そういう所で言霊は威力を発揮すると考えられていた。渋谷のスクランブル交差点みたいなものか? と思いそう訳してみた。
衢は「歌垣などをする聖地」であり、”夕占”は言霊の活動する夕暮れ時、「辻に立って行き交う人の言葉の片端から吉凶を占うこと」(新潮日本古典集成『萬葉集』三 注)。
人の行き交う交差点や辻は、人知の及ばぬパワーがあると考えられていたのだ。そう思うと、渋谷のスクランブル交差点に、多くの人々が惹きつけられるのも、深い意味があるのかもしれない。
といったことを『エロスでよみとく万葉集 えろまん』には書きました。
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