猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

『在宅ケア「小規模多機能」』

土本亜理子さんの『在宅ケア「小規模多機能」』(岩波書店)。
一気に読みました。
土本さんには、母の施設探しの時、メールや電話で相談し、大変心強かった覚えがあります。
ご本の冒頭の例は、私が土本さんに送ったメールをほんの少し変えてあるもので、土本さんから使用に際して連絡がきたこと、今もなつかしい思い出です。



当時のことはブログでも書きましたが(この前後に書いてあるはずhttp://d.hatena.ne.jp/maonima/20100201)
実家の母が脳出血による鬱・認知症でものを食べなくなった上、徘徊し、二〇〇九年九月三十日精神科に入院。そろそろ退院も間近という十二月十三日、二度目の脳出血を起こし、年明け、リハビリで歩けるようになったかと思いきや、体が左に傾くと同時に運動能力も低下し、ほとんど車椅子に(現在は完全車椅子)。
八十の父は在宅介護を望みましたが、子供たちは絶対反対。日に日に悪くなる母を見て、父も「在宅では無理かもなぁ」という気分になってきたようで、
二時間かかる実家のある市内五つの老健、二つの特養、四つの老人ホームを夫の運転する車で、時には父や弟もピックアップして回り、さらに私の住む区の老健も見学するなど、そのためのネット検索や電話での問い合わせ・予約の時間も入れれば、三ヶ月以上、朝から晩までほとんどかかりきりという日々。
そんな時、父が卓球老人仲間から「いい」と聞いた施設があって、ネットで検索すると、
「小規模多機能」
の文字が。
「なにそれ。なんかあやしい感じ?」
と思って、土本さんに尋ねたら、まさに今彼女が調べている介護施設のことだったのです。



介護施設って、老健・特養・介護付き有料老人ホーム・グループホームのほか、いろいろあって、ケアマネも介護の形が変わるたび、ころころ変わったりして、それはそれは複雑でわけ分かんないのです。
さらに「小規模多機能」って何?
の思いだったのですが、こうした疑問に、今度の土本さんのご本は、こたえてくれる。
土本さんは「ノンフィクションライター」としてお産の本や医療関係の本を出していますが、介護福祉士の資格もとって、訪問介護のヘルパーとしても活動している。
現場の人ならではの思いがこもった良い本です。



ただ、「あとがき」にもありますが、土本さんがこの世界に入るきっかけとなった本の著者故小澤勲氏の、
「在宅がいちばんいいと決めつけてはいけないよ」
とのことばに私も同意で、あくまで在宅を前提とした小規模多機能は、合わない人もいるでしょう。
それを判断する決め手にも、この本はなると思いました。



一個だけ気になったのは58ページ、小規模多機能に助けられ、認知症の夫89才を在宅で看護してる妻88才の娘さんの、
「父を看病しているから母がしっかりしているので」
ということばで、たしかにこのご夫婦はそうなのかもですが、私が以下のブログで読んだところによると、認知症患者を介護している配偶者はそうでない人に比べ、認知症になる率が六倍という統計があるそうで、理由はそれだけストレスが多いからとのこと。
今はしっかりしていても、反動でがくっときたり、認知症で共倒れになるというケースもあるでしょう。一日に三回とか来てくれて、夜中でも必要に応じて来てくれる小規模多機能は、そういう共倒れを予防してくれるであろうとはいえ、いろいろ考えさせられます。
http://blogs.yahoo.co.jp/hamadatrial/15481781.html
http://blog.excite.co.jp/shioya-antiaging/13608319/