猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

一切皆苦の人生、だましだまし生きてます。ネットでは、基本的にマイナスなこと、後ろ向きなことを書くスタンスですが、ごく稀にうっかり前向きなことを書いてしまう可能性もあります。

嫉妬と階級の『源氏物語』(xで書いたことまとめ)

嫉妬と階級の源氏物語というテーマは2015年あたりから頭にあって、2017年頃から一人で色々書いていた。それが大河のおかげで「新潮」で連載することができ書籍化に当たって加筆訂正・年表作成。改めて源氏は面白いと思った。

 

 

2015年あたりとちゃんと覚えているのは、『昔話はなぜ、お爺さんとお婆さんが主役なのか』(2015年刊行、2016年文庫化)を書き終えた前後のことだったからだ。

 

 

 

『嫉妬と階級の『源氏物語』』や『やばい源氏物語』を書いていて、感じたのは時代を超えた『源氏物語』の凄さ。セクハラや性虐待という語も概念もない時代、父のように慕った源氏に、14歳で紫の上が犯された時、孤児同然の彼女が源氏という貴公子にちゃんとした妻の扱いを受けたことで周囲はその幸いを賞賛したが、物語は、紫の上がその時、どんなにショックを受けていたかをこれでもかこれでもかと描いている。ルッキズムや性虐待といったことばはなくても、被害者の苦悩もちゃんと描かれているから現代人にも納得できる。

配下筋の妻である空蝉を犯した時、空蝉はうっとりするのではなく、抵抗・抗議の声を上げていて、そのセリフは今読んでも得心がいく。また、そういう女に源氏は惹かれているというのも、興味深い。

 

 

源氏物語』の超時代性は、この本よむと、また納得できると思う。

当時の社会規範で描かれた物語を、今の社会規範で以て読み解いていくと、浮き彫りになるのは、現代日本の抱えたさまざまな問題であるという面白さ。→