猫も羽<わ>で数えましょう(旧「大塚ひかりのポポ手日記」since2004)

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maonima2009-03-29

「いやなこと、辛いことなんか、書かなくたっていいんだわ。それは現実で、人が胸ひとつに収めていれば足ることだわ。そんなもの、書きのこす価値なんか、ありゃしない」
(田辺聖子『むかし・あけぼの』)

 この前段に「書きとどめてね、きっと。定子さまの、すばらしさ、女が感じたこの世のすばらしさを」というくだりがある。
 二十代の後半に失恋した頃、田辺聖子の本にはまっていたことがあって、その流れで読んだのだった。




 http://d.hatena.ne.jp/jun-jun1965/20090328
 私は、田中さんがレビューを削除した時点で、この件に関しては解決したと思って、意識の中から飛んでいた。
 小谷野さんには、学者としての執念があって、「淀君」「淀殿」の呼称に関して追究しているのだろうし、そのあたりは私も少しは気になって福田氏の当該書を図書館で借りたりもしたけれど(小和田氏のも今取り寄せたところだが読んでない)……。
 自分の名をこういう形で見ると、ぎょっとして、なにやら胃がちくちくする。
 もう私の名は出てこないで。
 ああこういうときは動物だ。
 シバ、タマ、ポロの写真はどこだ。
 代わりにチコちゃん(http://ameblo.jp/shiba-chico/)


3/30追記
田中さんがさっそく「明石の君」を根拠にあげたことに対して(実は私はそのことすら忘れてしまっていて……)、ブログを書いている。
これはもともとは田中さんが私の『オバサン論』につけたアマゾンのレビューが発端となっていて、
淀君は蔑称に近くて、今は淀君とはいいません。淀殿というんです」
といったことを書いていたのだが、
これは、拙著『オバサン論』の末尾に「オバサン名鑑」としてあげた「淀君」という項目をみて、つけられたレビューだった。
本文では淀君については取り上げてない。
なので、本書のレビューとしてはどうかと思ったのと、「淀君」に関する田中さんの書き込みは必ずしもそうとは限らないといった類のものなのでは?と思ったので、書き直すなり削除するなりしてほしいと私は言ったのだった。
しかしいきなり電話してしまったことは今思うと恥ずかしい。


あれからずいぶん経った。
今『源氏物語』の全訳をしている中で、新たに思うところをただ書こう。
「君」って呼称は、『源氏物語』にはわんさか出てくるんだが。
親王の娘の末摘花を「常陸宮の君」とか「君」をつけて呼んでるのはどうなのかしらん。
夕霧を、「冠者の君」と呼ぶときはまぁ「ガリ勉君」みたいな揶揄的な感じはある。
そして「大将の君」と呼ぶ時は、「大将殿」と呼ぶときよりも、独り立ちしていない風な、若輩者っぽいニュアンスがあると思う。
また、中年期の光源氏を、同じく中年期になり、大臣の風格をそなえた内大臣と比べて、
“なほいと若き源氏の君”
と形容しているのも、いかにも若い感じが漂っている。
でも「遊君」に通じる蔑称というようなところまでは、まったくいっていない。

当然のことながら、「君」って呼び方の含む意味は、時代によってずいぶん変遷してはいるのだろう。
そして「君」に限らず、『源氏物語』を訳すにつけても「御方」「方」「上」などと、その呼称は、呼ばれる主体の地位はもちろん、呼ぶ側の地位や感情によっても変わっていくことを見るにつけても(たとえば紫の上は、女三の宮降嫁後「対の上」と呼ばれることが多いが、女三の宮の父朱雀院などは心の中で「対の方」と、「上」はおろか、「御方」とすら呼ばない箇所もある。物語では、明石の君すら「御方」と呼ばれるのにとは玉上琢弥も指摘していて、これは前後の文脈から、院と紫の上との地位の格差はもちろん、心理的な距離も反映しているのではという気もするのだが……)、こうした呼称の重要さを痛感する。


『オバサン論』のレビューで、本文にもない「淀君」を取り上げて、★印1個にされた時(たしかそう。記憶違いもあるかも)、正直むっとしたが、
いま思えば、そうしたところにこだわる田中氏の思いも分からなくはない。
私は中学生の頃から古典おたくで、古典は我ながらよく読んでるなぁとは思うものの、自分がひっかかったところ、分からないと思ったところだけ、論文を読んだりするだけだから(読んでも信用しなかったりする場合もあるし、「誰も分からないんだ」ということが分かるだけだったりすることもあるが)、不勉強なところを指摘してくださるのは、考えてみればありがたいと思うべきではあろう。
それにそもそも、このレビューは、もう削除されているのだから、私としては、蒸し返すつもりは毛頭なかった。
が、行きがかり上(&自分の性格上)、こうして感想めいたことだけ書いてる次第です。









ああ〜明日の朝八時も柳生十兵衛だ。
最近はそれだけが楽しみ。