猫も羽<わ>で数えましょう(大塚ひかりの犬・猫・人・他)

♥️昔描いた漫画、毎週日曜更新予定♥️

犬の三角関係

maonima2007-10-31

 シバの散歩に行ったら、久々にトトちゃんに会った。トトちゃんはテリアと柴犬の雑種。メス犬である。源ちゃんが以前、脱走してトトちゃんの家の門の前にいて、トトちゃんの飼い主が源ちゃんの飼い主に通報した事は以前、書いた。
「相変わらず源ちゃんと仲いいんですか」
「そうなの。でもね、ちょっと前、おかしな事件があって」
とトトちゃんママが言うことには、
「源ちゃんの家に、源ちゃんのオバサンの知り合いがメスのブチ犬を連れて遊びに行ったのよ。源ちゃんと庭先で二匹でいたのね。そこへ散歩で通りかかったら、トトが怒っちゃって、ブチ犬に吠え出して大変だったの。ブチ犬もわんわん吠えるし。で、可笑しいのは、源ちゃんは吠えるでもなく、縁側の前を行ったり来たりして、二匹のメス犬の板挟みになっちゃって、おろおろして落ち着かないの」
「三角関係ですか」
「そうなのよ。源ちゃんのオバサンも大笑いしちゃって。それでうちのトト、以来、あのブチのメス犬と散歩で会うと怒って吠えるようになっちゃって。源ちゃんの家の前を通りかかって、源ちゃんがすり寄って来ても無視するようになったの」
「あたしの男に手を出すなってことですか。手を出した男には無視で対処ですね。まるで人間ですね」
「可笑しいでしょう。でもブチ犬は引っ越して行って、それでも源ちゃんとは冷戦状態が続いていたんだけど、今はトトも忘れちゃったのか、源ちゃんのことも無視しなくなったし、元通り仲良くなったんだけどね」
 人間と大して変わらないんだな。人間から見れば「アハハ」と笑えることだけれど、犬にしてみれば真剣で、それなりにストレスは感じているのだろう。しかし逆にいえば、人間の浮気や三角関係なんていうのも、この犬の例と変わらないかもしれない。
 はたから見れば「アハハ」と嗤うような馬鹿馬鹿しいことであろう。

 

 私自身は浮気とか不倫は自分が辛くなると思うので避けてはいるが、それでも妊娠した頃、不倫の罠にはまったことがある。といってもお腹はどんどん大きくなって、ちゃんとつきあうどころではなく早々に終わってしまったことは、『いつから私は「対象外の女」』(講談社、絶版)にも書いた通りだ。
 しかしそれでも何度か逢ってはいて、それが相手の妻に見つかった時、なぜかその妻は、まるで手品師のように、夫の名刺入れの中から「この人でしょう」と一発で私の名刺を取り出して、灰皿に入れたかと思うと、火をつけて、男の目の前で名刺を燃やしたそうだ。つきあいなどなかったに等しかったため、名刺を燃やされた男はまだ私の電話番号を記憶してはおらず、独自の方法で番号を調べ、以上のことを報告してくれた。それを聞いた時「恐ろしい」と思った。また、その直後、
「こちらにかけると、おつきあいしてくれるって聞いたんですが」
という妙な電話が知らない男から二度ほどかかってきたが、あれは何だったのか。
 この妻はトトちゃんよろしく、しばらく夫との関係を拒んでいたというが、その後も離婚することなく今にいたり、一等地に豪邸を建てたというような噂も聞く。
 その当時は怖かったし、身も縮むようなストレスを覚えていたものだが、いまこうして書いてみると、なんだか可笑しくて、ましてはたから見れば、この犬の三角関係のようなもので、馬鹿馬鹿しいことこの上なかろうよ。この男は詩人体質のナルシストで、「ひゃー」というような、ここにただで書くのはもったいないような面白いセリフを色々言われたものだ。それは男の優しさからきているものでもあったが、ネタになる男だった。それは独身時代、つきあった光の塊のようなあの人、この人も同じことである。いつかそれを物語として書く日まで生きていよう。